離煙のすすめ

〇タバコは本当に「嗜好品」なのか?


私たちは長い間、タバコを「嗜好品」――つまり楽しみの一つとして許される存在と認識してきました。しかし、その代償はあまりに大きく、もはや“嗜む”などという言葉では済まされない現実があります

■ 年間800万人が喫煙で命を落とす現実
国際的な研究機関「保健指標評価研究所(IHME)」の報告によると、喫煙が原因で亡くなる人の数は、年間約800万人に達します(※1)。これは東京都の人口の半分以上に相当し、男性の死亡の主な危険因子(男性死亡者の20.2%)であり、多くの規模の人が喫煙によって命を落としているのです。
しかもこの数値は、WHOがかつて「2030年までに到達する」と予測していた数字であり、2019年の時点ですでに現実となっているのです。つまり、喫煙による死亡は予測を上回るスピードで増加しています。


■ 命と経済を同時にむしばむタバコ
喫煙がもたらす損失は、命だけではありません。喫煙による医療費や生産性の低下などを含めると、年間1兆ドル(約110兆円)以上の経済的損失が世界中で生じていると試算されています(※2)。
さらにWHOは、「喫煙者の2人に1人が早死にする」と警告しています。寿命を平均して20~25年縮めるという、これほどまでに深刻な影響を及ぼす“嗜好品”は他に存在しません。


■ なぜタバコは今も合法なのか?
これほど多くの命と経済的損失を生む製品が、なぜ今も合法で、広く流通しているのでしょうか。日本では、「たばこ事業法」によってタバコ産業が保護されています。日本たばこ産業(JT)は、国の財政にとって依然として重要な税収源であり、結果としてタバコ規制に慎重な姿勢が続いています。
現行の法律では、「20歳未満の喫煙は禁止」とされている一方で、これは裏を返せば「20歳からは吸ってもいい」という誤解を生む構造にもなっています。健康リスクについての明確な警告や教育が不足しているまま、喫煙が“自己責任”として容認されてきたのです。

〇タバコは本当に「かっこいい」?


■映画や広告の幻想
かつて、タバコは「大人の象徴」「クールな生き方の一部」として、美化されたイメージと共にメディアを通じて広く社会に浸透してきました。映画やテレビ、雑誌広告の中で、喫煙はしばしばスタイリッシュで自立した人物の演出として用いられ、若者の心に強い憧れを刻みました。特に20世紀後半の広告では、氷山や森林といった「自然」や「生命力」と結びつける演出により、喫煙という行為に清涼感すら持たせようとする手法が多く見られました。
しかし、これらの広告は子どもにも届いています。たばこ自動販売機の広告が子どもの目線にあるように、私たちは幼いころから無意識のうちに「タバコ=かっこいい」というイメージを植え付けられてきました。これは心理学的にサブリミナル効果と呼ばれ、無意識のうちに行動や価値観を形成してしまうとされています。


■「かっこよさ」から「健康被害」へ
しかし今、私たちは真実を知っています。
タバコはかっこいいどころか、命を縮め、他人にも害を与える存在です。肺がんや心臓病の原因であり、受動喫煙によって家族や子どもにも健康被害を及ぼすことが、数多くの研究で証明されています。
喫煙は、もはや「かっこよさ」の象徴ではありません。私たちは過去の価値観を見直し、正しい知識に基づいて未来を選ぶ時代に生きています。たばこの本当の姿を知り、自分自身と大切な人の健康を守る選択をしましょう。

〇「タバコは自分の自由」では済まされない


かつて「喫煙は個人の自由」「他人に指図されることではない」と言われた時代がありました。しかし今や、タバコの煙が自分以外の健康や命に直結する深刻な影響を持つということは、世界的な常識です。これはもはや“マナー”の話ではなく、“命”の問題なのです。


■ 主流煙より危険な「副流煙」の存在
喫煙者が吸い込む煙(主流煙)よりも、周囲に拡散する煙(副流煙)のほうが有害物質を多く含むことは、複数の研究で明らかにされています。副流煙はフィルターを通らず、タールやニコチン、一酸化炭素、ホルムアルデヒドなどの有害物質を高濃度で含み、喫煙者本人だけでなく、周囲の人に多大な健康リスクをもたらします。
日本の国立がん研究センターの報告によれば、副流煙のタールやニコチンの濃度は、主流煙の2~5倍に達する場合があります。また、ホルムアルデヒドやベンゼンなどは発がん性があるとIARC(国際がん研究機関)によって分類されています(※3)。


■ 受動喫煙で命が奪われる
厚生労働省のデータでは、日本国内で年間約1万5,000人が受動喫煙によって命を落としていると推計されています(※4)。喫煙者の配偶者が肺がんになるリスクは、非喫煙者に比べて約1.9倍、喫煙可能な職場で働く女性の肺がんリスクは最大3倍にまで上がるとする研究もあります(※5)。


■ 子ども・胎児への影響は深刻
最も無防備な存在である子どもや胎児も、喫煙の影響から逃れられません。
・両親が喫煙者の家庭では、子どもの喘息、中耳炎、気管支炎の発症率が大幅に上昇(日本小児科学会, 2021)。
・妊娠中の受動喫煙で、流産・早産・先天異常・低体重出生のリスクが約2倍(厚労省・母子健康調査, 2002)。
・出生後も、母乳を通じてニコチンが乳児に届くことが確認されており、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクも上昇(US Surgeon General’s Report, 2006)。


■ タバコは「家庭内感染源」になる
さらに深刻なのは、喫煙の影響が「習慣」として子どもに引き継がれることです。大阪がん予防検診センターの調査では、両親が喫煙者の場合、子どもが将来喫煙者になる確率は非喫煙家庭の2倍以上。父親のみが喫煙者である場合、男児の43%が将来喫煙者になるという驚くべきデータもあります。


■自分だけでなく、大切な人の命を守るために
喫煙は、もはや「個人の自由」では済まされません。受動喫煙は、明確に他人の健康と命を損なう行為です。
あなたの煙は、隣にいる誰かの病気の原因になり、将来の命に影響を及ぼすかもしれません。今こそ、正しい知識に基づいた選択が求められています。「誰にも迷惑をかけていない」と思っていたその一服が、実は誰かを苦しめているかもしれないのです。

代表:額賀 正
現在、喫煙をしている方へのメッセージ


あなたにとってタバコは何ですか?・・・生きがいですか?人生最高の楽しみですか? いいえ違います。タバコはあなたに何の喜びも与えてくれません。
「タバコがないとアイデアが思いつかないんだ」「タバコがないと・・・・」そんな思いは、タバコの洗脳による幻想です。信じたくない気持ちはわかります。今までの人生を否定することになるのですから。そうやって苦しむ方を何人も見てきました。私もそうでした。しかしこう考えてください。 あなたはこれから、新しい人生のスタートを切るのです。タバコをやめたことによって、あなたの人生にマイナスになることは一切ありません。離煙に成功したあなたをうらやみ、妨害してくる友人もいるかもしれませんが、彼らだってタバコをやめたいのです。
そんな彼らには、あなたが救いの手を差し出せばいいのです。あなたにとって「タバコは必要ありません」。やめることを恐れてはいけないのです。
あと10日、あと5日、3日・・・・迫りくる最後の日に向かって、必ずあなたは恐怖に襲われます。パニックに陥ります。「タバコは吸っていたほうがいいのではないか」「タバコのない自分はちゃんとやっていけるのだろうか」・・・。安心してください。タバコをやめたことを後悔して奇行に走る人はいないでしょう。我慢している人は、そのイライラで不安定になるかもしれません。しかし幸いあなたはこれから離煙します。あなたに迫っているのは最後の日ではありません。最初の日、新たな人生へ出発の日です。
あなたにはタバコのない人生へ出発する権利があります。なぜ権利なのか、決めるのはあなただからです。あなたの家族・友人ではありません。あなた自身です。真剣にやめたいと願うのなら、その瞬間からあなたの離煙が始まるのです。しかし、「やめさせられるものならやめさせてみろ」そんな考えですと、失敗します。最後の一歩を踏み出すのが、恐怖になってしまうからです。 タバコは、税金目的のために唯一合法的に販売されている毒物です。あなたはタバコの味が好きなのではありません。依存によってニコチンを補給させられているだけ。煙にすることによって、少量ずつ毒を摂取しているだけです。人間は本来、毒を摂取して生きるようにできていません。人間本来の生活を取り戻そうではありませんか。お分かりですね、「タバコは必要ない」のです。聡明な決断を、いま必ず。
離煙協会では、そんな喫煙者一人一人の聡明な決断を応援していきます。

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