離煙のすすめ

離煙とは

煙から卒業すること、タバコがいらない自分になる、ということです。

禁煙とは煙草を吸うことをやめる事ですが、離煙とは喫煙から完全に卒業することを言い表します。 考えてください、重要なのはやめることではなく、離煙した状態を継続させることなのです。

喫煙は嗜好品?

WHO(世界保健機構)の推定では、タバコが原因で早死にする人の数は年間540万人。タイタニックを毎日6隻沈めてもおつりがきます。成人の6人に1人が、タバコによって命を落としているのです。2030年にはその数は膨れ上がり、1,000万人を超えるだろうとも推測されています。タバコによる病気は今後も増加するでしょう、そのために喫煙関連の医療費は2030年には現在の3.3倍になり、タバコ消費量を半分にした場合でも1.7倍に増えることが予想されています。

WHOは、喫煙を続ける限り、2人に1人は早死にすると警告しています。
しかも、働き盛りの中年期に死亡する可能性があるのです。寿命を20年から25年は縮めているのが、タバコだそうです。
生存率が50%を切るような嗜好品は、本来認められるわけがありません。しかしタバコは、法律でしっかりと、「吸っても良い」ことが認められています。だからその害がニュースや新聞で大きく扱われることはほとんどありません。タバコを吸う人がいなくなると、困る人がいっぱいいるからです。
タバコを売る日本たばこ産業株式会社(JT)は、1985年に日本専売公社から民営化された特殊法人です。監督官庁は財務省(当時は大蔵省)であり、2000年6月以前の歴代社長はみな、大蔵省からの天下りでした。
そのタバコを守る法律が、「たばこ事業法」です。第一条には、以下の条文があります。

我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

この法律で、タバコの健康へのリスクについては、広告やパッケージへの表記に注意せよとかかれているだけです。その結果、街のポスターには、「たばこは20歳になってから」というキャッチフレーズが並びました。大人になったらタバコを吸いなさい、そして税金を払いなさい。そういうメッセージが、街にあふれたのです。
財務省やJTの努力の結果、タバコによる税収は、年間2兆2千億円(平成13年)。税収全体の22%を占めるようになりました。タバコの健康対策のために、厚生労働省が行ってきた予算要求が、国家予算を管理する財務省によってはねつけられた事例は、枚挙にいとまがありません。国民に禁煙されては困るのです。

2005年2月、WHO提唱による「たばこ規制枠組条約」がついに発効となりました。今後日本は、嫌煙・禁煙に向けた動きを加速していくことでしょうか。

タバコに関する良いイメージ?

昔から私たちの周囲には、タバコに関する良いイメージがあまりにも溢れ過ぎています。タバコを吸う姿は格好いいとか、渋い大人のイメージを演出できるといった情報です。
映画の主人公が格好よくタバコを吸う、テレビコマーシャルでは、馬に乗った男がいかにも男らしさをアピールするように、タバコに火をつける。ドラマの中では、女性を待つ俳優がバーカウンターでタバコをくゆらす。
一方では、透き通った空気の中、氷山が流れ落ちる映像に合わせ、タバコのパッケージが登場する。あるいは生命感あふれる森林の中、鳥たちの躍動とともにタバコが登場する。

私たちはこれらの映像などの影響で、タバコは格好いいとかさわやかだなどと思い込んでしまっているのです。しかもタバコ広告は、大人だけが見るものではありません。街頭や車窓に映る野外広告、雑誌や新聞に掲載された広告、街中にあふれるタバコの自動販売機。ありとあらゆるところに、タバコの広告は存在します。その広告を私たちは幼いころから、目にし続けているのです。自動販売機に描かれているタバコ広告は、ちょうど小学1年生くらいの目の高さにあります。何の抵抗力も持たない子供が、通学途中に何度も、タバコの広告を目にしています。
人の潜在意識に対し、無意識にイメージをうえ付ける方法はサブリミナル・プログラミング法といいます。何十年もの間見続けたタバコの広告は、サブリミナル効果として私たちの心理に、染み付いているのです。

これでいいのか!? 日本の未成年事情

先進国においてはとくに喫煙者の人数が減りつつあります。しかし、その割合を順調に増やしている世代層があります。未成年者と若い女性です。現在喫煙者のほとんどは、10代でタバコを手にします。タバコ会社の巧妙な策略が、成功している証です。
こうした中、禁煙先進国アメリカでは、タバコの有害性、タバコ会社の卑劣さが認められ、大手タバコ会社各社は和解金を支払っています。医療費賠償については、大手各社とアメリカの50の全ての州政府と和解が成立していて、2025年までに少なくとも総額で24兆円もの大金を支払わなければなりません。
これはアメリカの例ですが、裁判で明らかになった社内文書には、タバコを売りつけるためなら成人も未成年も関係ない、タバコ会社の姿が生々しく記録されています。いや、むしろ、未成年こそが長い喫煙生活を送ってくれるタバコ会社の「お得意様」として明確に狙われているのです。
日本においても、厚生省の調査の結果、現在喫煙者の54.7%が未成年のうちにタバコを経験しており、41.5%の方は、喫煙が習慣化していることがわかりました。また、9割を超える人が、20代までにタバコ常習者になっています。
さらに衝撃的なことに、男子高校生の2人に1人以上が喫煙の経験をしていることがわかりました。しかも高3男子の4人に1人は、すでに毎日喫煙しているのです。

未成年のタバコの入手方法は、自動販売機が圧倒的に多くなっています。その普及台数は、1995年からの5年間で20万台以上増えました。自主規制ということで深夜は購入できないようにしていますが、あまり効果は生まれていません。総務省の調べでは、深夜にタバコを買う青少年は2割にも満たないとされています。
未成年の喫煙が問題になる中、教育機関ではどのような対策を行っているのでしょうか。
2002年7月に可決された「健康増進法」では次のように定められています。

第五章第二節 受動喫煙の防止

第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

2002年4月、和歌山県では、すべての公立学校で学校敷地内全面禁煙を実施しました。これを皮切りに、全国の自治体では、禁煙に踏み切る学校や公共施設が増えてきました。喫煙者にとっては、どんどん肩身の狭い世の中へと変わりつつあります。また官公庁や企業においては、新規採用の基準に喫煙の有無を盛り込み、喫煙者は採用しないと宣言する企業も現れています。大人がタバコをやめない限り、子どもは必ずタバコに憧れます。未来を担う今の子どもたちがタバコの害に蝕まれる前に、大人が、変わらなければなりません。

タバコは本人だけの問題、人に指図される覚えはない!

もはやそんな時代じゃないこと、おわかりですよね。“副流煙”“受動喫煙”こういった言葉は、聞いたことがあるでしょう。タバコを吸わない方は、大概良く知っています。タバコに関する迷惑のことです。
タバコの煙には二種類あります。フィルターを通して喫煙者本人が吸う主流煙と、周りの人が吸う副流煙です。喫煙者であっても、他人の煙は不快に感じます。それはなぜなのでしょう。

副流煙に含まれる有害成分
厚生労働省「喫煙と健康」
物質名倍率
ニコチン2.8
タール3.4
ベンツピレン3.9
一酸化炭素4.7
カドミウム3.6
アンモニア46.3
ベンゼン10.0
ニトロサミン52.0
ホルムアルデヒド50.0
窒素酸化物3.6

答えはひとつ、他人の煙はフィルターを通していないからです。フィルターを通さない煙は、いわば原液のようなものです。副流煙を吸えば、タールやニコチン、その他さまざまな有害物質が、そのまま体内に取り込まれます。その量は、フィルターを通した場合の3~4倍。50倍近い値を示すものもあります。たとえば、ホルムアルデヒドは「シックハウス症候群」の原因として、広く知られています。建築基準法では、ホルムアルデヒド発散対策として、24時間の換気システムが義務付けられました。あなたの部屋には、タバコから発生したホルムアルデヒドが充満していませんか?

夫が喫煙者の場合、その妻が肺がんにかかるリスクは、1.9倍に膨らみます。あなたが喫煙することで、非喫煙者の妻が、倍の確率で死亡するのです。ドイツの研究者は、喫煙可能な職場で働く女性が肺がんになる確率は、約3倍であるとも発表しました。会議室で一斉にタバコを吹かすような光景は、殺人と取られてもおかしくない状態です。もちろん受動喫煙は、非喫煙者だけの問題ではありません。喫煙者であるあなたも、他人のタバコの煙はしっかりと吸っています。

自分の子供や孫が側にいるのに、平気でタバコを吸っている大人を見かけることがあります。彼らは自分の家族の事をどう考えているのでしょうか。
大人同士なら、話し合いによって喫煙場所を定め、喫煙被害を減らすことができます。しかし幼い子供にはそれができません。煙を避けることすらできずに、小さな体に有毒物質を吸い込むことになります。両親が喫煙する家庭では、子供が喘息・気管支炎・中耳炎を患うことが多いという事実は、当然の結果です。

また、大阪がん予防検診センターの調べでは、両親が喫煙者の場合、子どもが喫煙する確率は男児27%、女児12%となりました。両親が非喫煙者の場合は、男児12%、女児5%であり、喫煙者の場合の半分以下です。父親のみが喫煙者の場合、男児の43%が喫煙しているという恐ろしいデータもあります。

2002年7月、厚生労働省の調査機関により、妊娠している女性の3人に2人が、受動喫煙の危機に瀕していることがわかりました。妊婦がタバコの煙を吸うことによって、流産の危険が倍程度に高まります。先天性の奇形のリスクも、倍程度まで上がります。この調査では、全体の約10%の女性が自ら喫煙していました。しかもそのほとんどは、胎児への影響を知りながらタバコを吸っていたそうです。血液中にとけ込んだタールやニコチンは、出産後も母乳を通じ、赤ちゃんへと送り込まれます。生まれながらにしてニコチン依存になっているような状態です。当然ですが、発育に影響を与え、脳に障害が生じることもあります。育児中に両親が喫煙することによって、乳幼児突然死症候群(SIDS)を発祥するリスクが高くなることも研究の結果判明しています。

現在、喫煙をしている方へのメッセージ

あなたにとってタバコは何ですか?・・・生きがいですか?人生最高の楽しみですか?
いいえ違います。タバコはあなたに何の喜びも与えてくれません。

「タバコがないとアイデアが思いつかないんだ」「タバコがないと・・・・」そんな思いは、タバコの洗脳による幻想です。信じたくない気持ちはわかります。今までの人生を否定することになるのですから。そうやって苦しむ方を何人も見てきました。私(筆者)もそうでした。しかしこう考えてください。
あなたはこれから、新しい人生のスタートを切るのです。タバコをやめたことによって、あなたの人生にマイナスになることは一切ありません。離煙に成功したあなたをうらやみ、妨害してくる友人もいるかもしれませんが、彼らだってタバコをやめたいのです。そんな彼らには、あなたが救いの手を差し出せばいいのです。あなたにとって「タバコは必要ありません」。やめることを恐れてはいけないのです。

あと10日、あと5日、3日・・・・迫りくる最後に日に向かって、必ずあなたは恐怖に襲われます。パニックに陥ります。「タバコは吸っていたほうがいいのではないか」「タバコのない自分はちゃんとやっていけるのだろうか」・・・。安心してください。タバコをやめたことを後悔して奇行に走る人はいないでしょう。我慢している人は、そのイライラで不安定になるかもしれません。しかし幸いあなたはこれから離煙します。あなたに迫っているのは最後の日ではありません。最初の日、新たな人生へ出発の日です。

あなたにはタバコのない人生へ出発する権利があります。なぜ権利なのか、決めるのはあなただからです。あなたの家族・友人ではありません。あなた自身です。真剣にやめたいと願うのなら、その瞬間からあなたの離煙が始まるのです。しかし、「やめさせられるものならやめさせてみろ」そんな考えですと、失敗します。最後の一歩を踏み出すのが、恐怖になってしまうからです。
タバコは、税金目的のために唯一合法的に販売されている毒物です。あなたはタバコの味が好きなのではありません。依存によってニコチンを補給させられているだけ。煙にすることによって、少量ずつ毒を摂取しているだけです。人間は本来、毒を摂取して生きるようにできていません。人間本来の生活を取り戻そうではありませんか。お分かりですね、「タバコは必要ない」のです。聡明な決断を、いま必ず。

離煙協会では、そんな喫煙者一人一人の聡明な決断を応援していきます。